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電源工事不要の電子ポスターLIG|室内光発電と省電力IoT技術

なぜLIGは電源工事不要で365日ネットワーク運用できるのか? ― 室内光発電と超低消費電力IoT技術の融合

電源ケーブルも、電池交換も、外部充電もいらない。そんな電子ポスターが、駅の風景を変えようとしています。

駅構内や商業施設で見かけるデジタルサイネージ。その多くは、ディスプレイを動作させるために電力を必要とし、設置場所まで電源を引き込まなければなりません。

一方、従来の紙ポスターには電源工事が不要という大きな利点があります。しかし、内容を更新するたびに印刷・輸送・貼替作業が必要です。

もし、紙ポスターと同じように電源工事なしで設置でき、しかもネットワークを通じて表示内容を更新できるとしたら。

その実現を目指しているのが、ディサイン株式会社の40.5インチ・カラー電子ポスター「LIG(リグ)」です。

LIGの特徴は、単に消費電力の少ないディスプレイを採用したことではありません。

室内光からエネルギーを生み出す技術と、スマートホーム分野で進化してきた超低消費電力IoT技術を組み合わせること。

この2つの技術が、LIGのエネルギー自立型ネットワーク運用を支えています。

1. 電源工事が不要になるという、新しい発想

これまでのデジタルサイネージは、電源の確保が設置場所を決める大きな条件でした。

駅の壁面や柱、地下通路などにディスプレイを設置しようとすると、電源配線や設備工事が必要になる場合があります。

一方、乾電池や充電式バッテリーだけで動作させる方法では、定期的な電池交換や充電が避けられません。

多数の広告媒体を長期間運用する場合、こうしたメンテナンスは大きな負担になります。

LIGでは、この発想を根本から変えようとしています。

必要な電力を設置場所の照明から生み出し、蓄えたエネルギーを効率的に利用する。

つまり、外部から電力を供給する代わりに、周囲の環境に存在するエネルギーだけで動作する仕組みです。

こうした技術は「エナジーハーベスティング(環境発電)」と呼ばれています。

2. 技術革新① ― 室内光でも効率よく発電するペロブスカイト太陽電池

エナジーハーベスティングは、決して新しい概念ではありません。

電卓などに使われてきた小型太陽電池も、身近な光から電力を生み出す技術の一例です。

しかし、大型の電子ポスターを動作させるには、画面更新に加えて、コンテンツを受信する無線通信や電子回路にも電力が必要です。

限られた設置面積で、駅構内の比較的弱い照明から必要な電力を確保することは、容易ではありませんでした。

この可能性を大きく広げているのが、ペロブスカイト太陽電池(PSC:Perovskite Solar Cell)です。

PSCは光を吸収する材料の特性を調整でき、LEDや蛍光灯などの室内照明に適した発電特性を実現できることから、近年注目を集めています。

従来のアモルファスシリコン太陽電池や色素増感太陽電池でも室内光による発電は可能でしたが、PSCの研究開発が進んだことで、より小さな面積から多くの電力を得られる可能性が高まってきました。

2026年4月に公開された研究レビューでは、研究室レベルのPSCにおいて、1,000 luxの室内照明下で45%を超える光電変換効率が報告されています。

もちろん、これは特定の研究条件下で得られた数値であり、実際にLIGへ搭載するPSCの発電効率を示すものではありません。

重要なのは、以前は難しかった小面積・低照度での電力確保が、技術の進歩によって現実的な設計課題になってきたことです。

LIGでは、このPSCを活用することで、駅の屋内照明から電力を得る仕組みを目指しています。

▶ 関連記事:LIGで活躍するペロブスカイト太陽電池について

3. 技術革新② ― スマートホームが育てた、超低消費電力IoT技術

発電技術の進歩と同じくらい重要なのが、電子機器そのものの省電力化です。

その代表的な分野が、スマートホームです。

スマートホームでは、温湿度センサー、ドア開閉センサー、スマートボタンなど、さまざまな小型デバイスがネットワークにつながっています。

こうしたデバイスの多くは、小さな電池で長期間動作することが求められます。

そのため、半導体メーカーや通信技術の開発企業は、限られたエネルギーで必要な処理と通信を行う技術を進化させてきました。

その中心となるのが、超低消費電力SoC(System on Chip)です。

SoCは、演算処理や機器制御などに必要な機能を小さな半導体チップに集約したものです。

近年のIoT向けSoCでは、必要な処理を効率よく実行し、それ以外の電力消費を抑えるための技術が進んでいます。

また、無線通信の分野でも、少ないエネルギーで情報をやり取りする技術が発展してきました。

ディサインでは、こうしたスマートホーム分野で培われた技術を、電子ポスターという新しい用途へ応用しています。

小さなセンサーを長期間動かすために進化してきた技術が、今度は大型の広告媒体をネットワークにつなぐために活かされようとしているのです。

4. 技術革新③ ― 表示を維持する電力がいらない、カラー電子ペーパー

そして、LIGを支えるもう一つの重要な技術が、カラー電子ペーパーです。

一般的な液晶ディスプレイでは、画像を表示している間、バックライトなどに継続して電力を供給する必要があります。

これに対し、電子ペーパーには、一度表示した画像を電力なしで保持できるという大きな特徴があります。

画面を書き換える際には電力を必要としますが、更新後はディスプレイへの電力供給を停止しても画像が残ります。

これは、数秒ごとに動画を切り替える用途よりも、静止画を長時間表示する広告ポスターに適した特性です。

さらに、電子ペーパーは周囲の光を反射して画像を表示するため、通常はバックライトを必要としません。

LIGが採用する40.5インチのカラー電子ペーパーも、こうした特性を活かしたものです。大型ディスプレイでありながら、表示を維持するために電力を消費しない。

この特徴が、室内光から得られる限られたエネルギーを有効に利用するうえで重要な役割を果たします。

▶ 関連記事:電子ペーパーは環境にやさしい?紙ポスターとの違いを比較

5. 大型バッテリーに頼らない、小さな蓄電池によるエネルギー自立

LIGのエナジーハーベスティングで、もう一つ注目していただきたいのが蓄電技術です。

一般に、太陽電池で機器を長期間動作させようとすると、大容量の蓄電池が必要になるイメージがあるかもしれません。

しかし、LIGが採用する蓄電池は驚くほど小型です。

そのサイズは、単二形乾電池より少し背が高い程度。容量はわずか2.6Ahで、大型電子ポスターを動作させる電源としては非常にコンパクトです。
それでもエネルギー自立型の運用を目指せるのは、次の3つの技術を組み合わせているからです。

① 室内光から効率よく発電する

ペロブスカイト太陽電池が、駅などの屋内照明から電力を生み出します。

② 小型の蓄電池にエネルギーを蓄える

発電した電力を蓄電池に蓄え、照明が消えている時間帯や画面更新時などに備えます。

③ 必要な電力を最小限に抑える

超低消費電力SoC、無線通信技術、カラー電子ペーパーを組み合わせ、通信や画面更新に必要なエネルギーを効率よく利用します。

つまり、LIGが目指すのは、大量の電力を蓄えることではなく、小さなエネルギーを無駄なく使い続けることなのです。

安全性にも配慮したLiFePO₄蓄電池

LIGでは、蓄電池の安全性にも配慮しています。

採用しているのは、電気自動車(EV)や定置用蓄電池などでも使用されているリン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO₄)です。

LiFePO₄は熱安定性に優れ、一般的な三元系リチウムイオン電池と比較して、熱暴走や発火のリスクを抑えやすい特性を持っています。

もちろん、電池である以上、発火リスクが完全になくなるわけではありません。しかし、駅や商業施設など、多くの人が行き交う公共空間への設置を想定するLIGにとって、安全性に配慮した電池選定は重要な設計方針の一つです。

電池交換も外部充電も必要としない運用へ

LIGが目指しているのは、この小型蓄電池を室内光から繰り返し充電しながら、長期間にわたってネットワーク運用を継続することです。

電源ケーブルを接続せず、定期的な電池交換や外部充電も必要としない。

その実現に重要なのは、蓄電池の大きさではなく、日々の発電量と消費電力のバランスです。

「エネルギーを大量に蓄える」のではなく、「必要なエネルギーを自ら生み出し、使い続ける」。

この発想こそが、LIGのエネルギー自立型設計を支えています。

なお、設置環境によって室内光の条件は異なるため、こうした自立運用が実際の駅環境で成立するかどうかは、今後のPoCで検証していきます。

6. 24時間365日のネットワーク管理と、省電力は両立できるのか?

ここで疑問になるのが、ネットワークにつながる電子ポスターを、限られた電力だけで長期間運用できるのかという点です。

一般に、電子機器を常時動作させれば、その分だけ電力を消費します。

しかし、電子ポスターに求められるのは、動画を連続再生することではありません。

重要なのは、必要なタイミングで新しい広告コンテンツを取得し、指定された表示内容へ更新できることです。

LIGでは、スマートホーム分野で進化してきた超低消費電力SoCと無線通信技術を応用し、ネットワークへの常時接続と省電力動作の両立を目指しています。

これにより、24時間365日ネットワークに接続された状態を維持しながら、クラウドを通じて広告コンテンツや端末の状態を管理し、必要なタイミングで表示内容を更新できる仕組みを構築しています。

常時ネットワークにつながっていても、消費電力は極めて小さい。

この技術こそが、限られた室内光から得られるエネルギーで電子ポスターを運用するための重要な要素です。

また、LIGはコンテンツ管理・配信プラットフォーム「BusolaCast」と連携することで、複数の電子ポスターを遠隔から管理する仕組みを実現しています。

このように、室内光発電、超低消費電力IoT技術、電子ペーパーの特性を組み合わせることで、従来のデジタルサイネージとは異なるネットワーク運用の可能性が生まれています。

7. 電源工事不要が、広告媒体の設置場所を変える

LIGが目指すエネルギー自立型の運用が実現すれば、そのメリットは電気代の削減だけにとどまりません。

LIGは大型の蓄電設備を必要とせず、小型のLiFePO₄蓄電池での自立運用を目指しています。これにより、表示装置を薄く、軽くすることで設置の自由度を高めています

例えば、駅構内の壁面や柱など、電源の引き込みが難しい場所にも電子ポスターを設置しやすくなります。

新たな電源配線を必要としなければ、工事に伴う費用や設置場所の制約を軽減できる可能性があります。

また、定期的な電池交換や外部充電が不要になれば、設置後のメンテナンス負担も抑えられます。

さらに、広告コンテンツをネットワーク経由で更新できれば、従来の紙ポスターで必要だった印刷・輸送・貼替作業を減らすことにもつながります。

つまり、LIGが目指しているのは、単に電力消費の少ない電子ポスターではありません。

紙ポスターの設置しやすさと、デジタルサイネージの遠隔更新機能を両立させる、新しい広告媒体なのです。

8. 実証で確かめる、エネルギー自立型メディアの可能性

ディサイン株式会社では、2027年からのLIGのPoC(概念実証)に向けて開発を進めています。

実証で重要になるのは、実際の駅環境において、発電と電力消費のバランスが長期間にわたって維持できるかという点です。

駅の照度は設置場所や時間帯によって異なります。照明が十分に届く場所もあれば、比較的暗い場所もあります。

また、ネットワークの利用状況や画面更新頻度によっても、必要な電力量は変わります。

PoCでは、こうした実環境の条件を踏まえ、発電量、消費電力、蓄電状況、通信・画面更新の安定性などを検証していく計画です。

さらに、長期運用に向けては蓄電池や太陽電池の耐久性、設置環境による性能変化も重要な評価項目となります。

電源工事不要・定期的な電池交換不要という運用を、実際の駅環境でどこまで実現できるのか。

技術的な可能性を実用的な広告媒体へと進化させるための取り組みが進んでいます。

9. 発電技術とIoT技術の進化が、紙のように使える電子メディアを生み出す

ペロブスカイト太陽電池による室内光発電。

スマートホームで進化してきた超低消費電力SoCと無線通信技術。

そして、表示を維持するための電力を必要としないカラー電子ペーパー。

それぞれ異なる分野で進んできた技術が、今、一つの電子ポスターの中で結びつこうとしています。

これまで、ネットワークに接続されたディスプレイには、外部から電力を供給することが当たり前でした。

しかし、周囲の光から電力を生み出し、必要なエネルギーを自ら賄うことができれば、その常識は変わるかもしれません。

電源を引くのではなく、電力を生み出す。

電池を交換するのではなく、エネルギーを循環させる。

紙を貼り替えるのではなく、ネットワークで情報を書き換える。

LIGは、そんな新しい情報表示のあり方を目指しています。


LIGプロジェクト・PoCへの参加について

ディサイン株式会社では、LIGのPoCに関心をお持ちの鉄道事業者・広告事業者の皆さまからのご相談を受け付けています。

電源工事不要の電子ポスターによる新しい広告運用や、既存の広告配信システムとの連携についてもご相談いただけます。

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